自分の感情に名前をつけてみよう ~感情のラベリング3~
休み時間、図書館で夢中になって本を探していたら、授業開始まであと1分だと気が付いた。
本を急いで借りて教室に向かう。
間に合わないかも、と思ったらつい急ぎ足になってしまった。
走っているつもりはなかったが、すれ違った先生に、大きな声で「廊下は歩きましょう!」と言われた。
Aはなんだか心臓がドキドキして、もやもやした気持ちになった。
この時のAくんに、どんな感情がわき上がったのか?
なぜ心臓がドキドキしたのか?
なぜもやもやしたのか?
もやもやは具体的にどんな気持ちか?
Aくん自身にたずねると
「僕は悪いことしていないのに、先生がいきなり大声で怒鳴った。 なんだかよくわからないけど、イヤな気持ち。 先生ひどい。 先生はきらいだ。」とこたえました。
すごくザックリとした感情のとらえと、極端な快不快の判断。
Aくんは、出来事の一連の流れや、先生に大きな声で言われるその前後の、自分の感情だけでなく行動にも目を向けられていないですよね。
なんだかよくわからないけど、イヤな気持ち。(ザックリとした感情のとらえ)
先生がいきなり大声で怒鳴った。先生ひどい。先生はきらいだ。(極端な快不快の判断)
これ自体が悪いというわけではありません。 誰にでも思考のクセはありますし、物事のとらえ方や瞬間的な快不快の判断や感覚も人それぞれです。 直そうと思って直せるものでもありませんし、無理に直す必要もないと思います。
しかし、そのあと、出来事を客観的に振り返って、その時の自分の行動や感情、出来事が起こった瞬間に頭に浮かんだ言葉(考え・思考)を言葉で表現できるかが重要です。
もとい。 認知行動療法の域に入ってしまって説明が長くなりそうなので、もっと簡単に…。
(認知行動療法についてもまたの機会にお話したいと思います。)
今回は、『イヤな気持ち』について順番に分析していきます。
- イヤな気持ちは『喜怒哀楽』のどれに分類されるか。→ 『怒』
- 『怒』の中のどれが一番近い気持ちか(いくつか選択肢を用意してあげましょう)
・(先生に)納得いかない → ◎
・(みんなの前で)恥ずかしい
・(大声に)イライラする
・(失敗した自分が)情けない
・(失敗した自分が)悔しい など… - なぜ『納得いかない』と思ったか → 走ってないのに先生が怒ったから
よって、Aくんの、なんだかよくわからないけど、イヤな気持ちは、
『自分は走ってるつもりはなかったのに、大声で先生が怒ったこと』への『納得いかないという怒り』の感情と言えます。
感情のラベリングとは、このように、感情に名前を付けてあげることです。
ただなんとなく『もやもや』とした『イヤな気持ち』に名前を付けてあげることで、出来事そのものを客観視でき、なぜそんな感情になったのか、出来事の受け取り方や自分の感情の変化などがわかりやすくなります。
それらがわかると、ストレスを抱えた自分の感情をどう扱えばいいのか、今後どう対応すればいいのかがわかるので、イライラやもやもやが減ったり、早く解消できるようになったりします。 感情や行動のコントロールもしやすくなりますので、衝動的に手が出てしまう子や、ストレスを抱えて落ち込みやすい子にも、もちろん有効です。
ところで、何か気付いたでしょうか?
Aくんの思考のクセです。
先生は大声で「廊下は歩きましょう!」と言ったけど、「走るな」とは言ってないですよね。
大声ですが、怒った口調かどうかはわからないですよね。
今回はここまで(*^^*)。 続きはまた次回お話します。